3分でわかる!棚田
棚田とは
棚田とは、山の斜面や谷間の傾斜地(傾斜20分の1以上とします)に階段状に作られた水田のことを指し、千枚田といわれることもあります。
日本で有名な棚田の場所としては、千葉県の「大山千枚田」、新潟県の「星峠の棚田」、三重県の「丸山千枚田」、石川県の「白米千枚田」などが挙げられます。
農林水産省が1988年に実施した「水田要整備量調査」では、22.3万ha、同じく農林水産省が2005年(平成17年)に実施した農林業センサスによると、全国に棚田は約13.8万haあるとされています。
その後、国の調査の対象外となってしまったため、正確な面積は明らかになっていませんが、耕作放棄などを理由に減少傾向にあるとされています。
棚田は全国に存在しており、特に中国、九州、北陸地方に多い傾向があります。
また、日本だけでなく海外にも棚田は存在しており、1995年に世界遺産に登録されたフィリピン・コルディリェーラの棚田群、1200年以上の歴史を持ち広大な面積を誇る中国の紅河ハニ棚田、そして2012年に世界遺産となったバリ島中部のジャティルイ・ライステラスなどが有名です。
棚田の歴史
棚田は、その起源が古く、古墳時代(6世紀中頃〜7世紀頃)にまで遡ると言われています。
しかし、本格的に棚田が各地で見られるようになるのは、江戸時代以降です。
- 古代古墳時代以前〜
- 古墳時代以前〜 棚田は、その起源が古く、古墳時代(6世紀中頃〜7世紀頃)にまで遡ると言われています。
- 中世鎌倉時代〜
室町時代 -
鎌倉時代〜室町時代
室町前期の1406年(応永13年)の文書に、「タナ田」という言葉が初めて記録として確認されています。
中世の豪族や戦国時代の武将によって、棚田の開拓が進められました。 - 近世江戸時代
-
江戸時代
人口が急増し、平野部の農地が限られるようになったため、土地を求めて山の上へと開田が本格的に進みました。技術も進歩し、この時代に多くの棚田が開かれました。特に西日本では、石垣構築技術が発達し、頑丈な石積みの棚田が多く作られました。
米は貴重な財源(年貢)でもあったため、少しでも収穫量を増やすために棚田作りが奨励されました。中には、年貢米の取り立てから逃れるために、役人に見つからないよう山の奥に作られた「隠し田(隠田)」としての棚田もあったと言われています。
- 近代・現代
-
戦後の食糧難の時代を経て、1970年代頃からは、中山間地域の過疎化や農家の高齢化、そして減反政策などにより、棚田の耕作放棄が進みました。
しかし、棚田が持つ土砂崩壊防止や水源涵養、多様な生物の生息場所としての機能、そして「日本の原風景」としての文化的価値が見直されるようになり、1990年代以降、保全活動が活発化しています。
棚田は、単なる農地としてだけでなく、日本の国土と人々の営みの歴史を刻んだ貴重な文化遺産と評価されています。
棚田の価値
棚田には以下のような価値があるとされています。
-
1農業的価値
- 傾斜地でも水を効率よく利用でき、稲作ができる。
- 土壌の流出を防ぎ、自然の水循環を保つ役割がある。
-
2環境的価値
- 多様な生物の生息地となり、生態系の維持に貢献している。
- 棚田の水田は湿地のような環境を作り、水質浄化や洪水防止にも役立つほか、水源涵養機能を持つ。
- 地すべりや土砂崩れを防止し、国土を保全する役割がある。
-
3文化的・景観的価値
- 伝統的な農法や地域の暮らしを象徴する文化遺産。
- 美しい景観として観光資源になり、地域活性化に繋がる。
また、棚田米は良食味だといわれており、一般のコメより高価格で取引されます。コメは寒暖差が大きいほど甘みの素であるデンプンが蓄積される量が増え美味しくなります。また、新鮮で上質な水もコメを美味しくする要因であり、どちらも備えている棚田は美味しいコメが育ちやすいとされています。
棚田の危機
一方で、平坦地の水田と比較し、棚田は階段状の狭い区画が多く、大型機械が使いにくいことから、手作業が必要で生産性が低いとされており、維持をするためには多大なコストを要します。経済面や担い手不足などの多くの課題を抱えていることから、棚田の管理が放棄され、荒廃が進んでいます。
過疎化や高齢化で農業を続ける人が減り、棚田が荒廃してしまうと、
- 土砂崩れや洪水のリスクが高まる。
- 生態系や地域の水環境が悪化する。
- 文化や景観が失われる。
棚田を守ることは、環境保全や地域の安全、伝統の継承に直結します。さらに、持続可能な農業や観光を通じて地域経済の活性化にもつながるため、社会的にも重要です。
棚田の保全活動
国も棚田保全へ力を入れています。
2019年(令和元年)6月に、「棚田地域振興法」が成立し、8月から施行されました。これは、棚田を単なる農業生産の場として考えるのではなく、国土保全、景観形成、文化継承など棚田が持つ多様な機能を持続的に維持・発展させるための法律です。この法律に基づき、国や自治体は棚田を守るための様々な支援を行っています。
こちらもあわせてご覧ください
棚田地域振興法ってなに?
また、2022年(令和4年)には、農林水産省によって優良な棚田の認定制度である「つなぐ棚田遺産~ふるさとの誇りを未来へ~」が開始され、全国で271か所の棚田が選定されました。
全国的な棚田保全の取り組みとしては、棚田オーナー制度やNPOや市民によるボランティア活動などがあります。棚田オーナー制度は日本各地約80か所で取り組まれている制度で、当社は新潟県十日町市にある「星峠の棚田」の棚田オーナーになっています。
FAQ・豆知識
-
棚田はいつ訪れるのが良いですか?
季節ごとに魅力があります。
•春:水を張った田が空を映し、鏡のような風景に
•夏:青々とした稲が風に揺れる姿
•秋:黄金色の稲穂が輝く収穫期
•冬:雪化粧した静寂の景観
いずれの季節も写真愛好家に人気です。 -
棚田に関わるときのマナーはありますか?
はい。農地は地域の方々の生活の場でもあります。
畦道を荒らさない、ゴミを持ち帰る、農作業の妨げをしない など、地域のルールを尊重することが大切です。
-
棚田米はなぜ高価なのか?
生産コストが高いため、価格が高いことが多いですが、その価格に見合う美味しさも評価されています。
-
棚田が減少することの何が問題なのか?
国土保全の観点で問題が多いとされています。水源涵養機能が失われることで、洪水・土砂災害の危険度が高くなり、国土の安全性が低下してしまいます。また、生物多様性がなくなる、景観が損なわれるなども大きな問題です。
-
棚田の面積はなぜ減少しているのか?
労働生産性の低さから後継者が不足しています。耕作できなくなった場所は耕作放棄地となってしまい、荒廃してしまいます。
-
国は支援しないのか?
しています。中山間地直接支払交付金などの制度があります。