ヤマタネ
想い

棚田保全に向けたヤマタネの想いを、
株式会社ヤマタネ代表取締役社長
河原田 岩夫が語ります。

棚田について

代表取締役社長の画像

改めて棚田の魅力を教えてください。

まず⼀つ目に、おコメが美味しいということです。⽔源に近いので⽔がきれいで、昼夜の温度差が⼤きいことで、おいしいお米が収穫できます。

⼆つ目に、保⽔機能です。⽔を吸収して貯めることができるので、⼟砂崩れ防⽌やダムの役割を果たします。地域の安全・防災に⼤きく貢献しています。

三つ目は、⽣物多様性です。棚田には様々な⽣物が⽣息しています。
また、棚田は⾥⼭としての役目もあります。最近クマやイノシシなどの被害について報道されるようになりましたが、棚田の減少も関係していると思います。

そして何よりも、人々を一番魅了する点は景観にあります。以前に、新潟県の蒲⽣の棚田に旅⾏しましたが、雲海の中、棚田を照らす朝焼けの様⼦は何物にも代えがたいほどの絶景でした。

棚田支援の目的

棚田の画像

米卸のヤマタネが棚田支援に取り組む意義について、
どのように考えていますか。

根源にはヤマタネグループが掲げるパーパス「多様な⼈財が集い、社会に貢献する⼒を⽣み出す」があります。社会課題解決型企業への変⾰をうたっていますが、⾊々な社会課題の中で、棚田の耕作放棄地化は喫緊の課題だと認識しています。棚田だけでなく、産地全体を守りたいと思っています。稲作⼈⼝減少の根本的な原因は経済合理性が乏しい事だと思います。

国内のコメ生産現場では、人材の確保、資材費の高騰、高額な農業機械、気候変動など様々な課題が山積しています。ヤマタネグループは、「産地の『続く』を支える」を合言葉に持続可能な営農の実現に向けて取り組みを行ってまいりました。その取り組みの一つとして、農業ベンチャーを中⼼とした、産地の課題解決に資するソリューションを持つ企業と協業を開始しています。また、儲かる農業の実証実験の場として2024年9⽉には新潟県に農業⽣産法⼈「ブルーシード新潟」を設⽴しました。

棚田だけではなく、通常の⽥んぼも担い⼿不⾜などで厳しい状態なのに、なぜあえて棚田の支援を⾏うのか。これについては、現状のままでは棚田が真っ先に姿を消していってしまうという「待ったなし」の状態だからです。棚田は通常の⽥んぼと⽐べて湾曲している上、⼀枚⼀枚の⾯積が⼩さいことで⼤型機械の使⽤が難しく、多くの⼯程を⼿作業で⾏っていることで、通常の⽥んぼよりも担い⼿不⾜が深刻です。また、⼀度耕作放棄地になってしまうと、⽔⽥に復旧するのに膨⼤な労⼒と時間がかかります。

棚田を守るという取り組みは、産地の「続く」を支えるという⼤きな目標を達成するための1つの取り組みなのです。創業から100年、コメに関わってきたヤマタネが取り組むべき課題であると思いますし、意義は⼤いにあると思っています。


特色ある取り組みですね。

その通りで、この取り組みがヤマタネの存在価値の1つになり得ると考えています。CSRの⼀環として棚田保全に取り組む会社はいくつかありますが、継続的に支援している企業はほんの⼀握りです。2023年の株主優待制度の拡充を⽪切りに棚田保全の取り組みを開始しましたが、当社の株主優待制度だけでは守れる棚田に限界があります。今回の取り組みはあくまでスタートであって、これから様々な外部企業と連携しながら持続的に支援できる仕組みを作っていきたいと考えています。

このチャレンジを通じてヤマタネが「日本⼀棚田を守っている企業」になることが出来れば、社会的意義は⼤きく、ヤマタネグループの魅⼒に繋がると考えています。

株主優待に棚田支援を取り入れた経緯

従来の優待品はカレンダーとお米でしたが、拡充した背景と目的を教えてください。

きっかけは、当社の社外取締役であり、日本株式市場に⻑年かかわっているスノディ⽒から、「株主優待は株価と相関関係がある。ヤマタネらしい優待に変更したら良いのではないか」とアドバイスを受けたことです。

棚田に着目した原点は、私が個⼈的に参加している千葉県鴨川にある棚田の稲刈りボランティアです。このイベントには棚田オーナーが100⼈以上参加しており、棚田に興味を持っている人がたくさんいる事を感じていました。ヤマタネらしい株主優待制度を考える中で、棚⽥⽀援の取り組みを開始しました。


棚田は日本各地にありますが、あえて新潟県十日町市の「星峠の棚田」を選定された理由と経緯について教えてください。

株主優待制度に棚田オーナー制度を取り⼊れたいと考えた時に、どこの棚田で実施するかを検討しました。
現在、当社株式を1,000株以上保有している株主様に棚田米を贈呈しておりますが、対象となる株主様の数を考慮すると、ある程度の規模の生産力や圃場の大きさが必要になる、というのが条件の1つ⽬です。

株主優待 棚田米を使用した日本酒「純米吟醸やまたね」の画像

次に、株主優待制度に取り⼊れたこともあり、このオーナー制度は持続性が必要だと考えました。「星峠の棚田」の地元⽣産者の⽅は最年少が70代中盤とかなり⾼齢ですが、NPO法人越後妻有里山協働機構が中心となって、「まつだい棚田バンク」というプラットフォームで支援を行っています。NPO法人越後妻有里山協働機構は「⼤地の芸術祭」が取り組むプロジェクトの1つで、50⼈程度の職員がいますが、ほとんどが若い⼈で、「まつだい棚田バンク」ではアート⼈材や⼥⼦サッカーの選⼿達が⽣産活動をしています。これによって、「星峠の棚田」は持続性が⾼いと判断しました。

もう1つの⼤きな理由は星峠の景観の良さです。「星峠の棚田」は、NHKの⼤河ドラマにも使われたことのある⾮常に有名な棚田です。雲海に浮かぶ朝焼けの⾵景は日本でも有数の景観の良さを誇り、毎年多くの棚田ファンが撮影に訪れています。「星峠の棚田」は全体で30haほどの広さですが、ヤマタネはこのうちの約2.5haのオーナーになりました。

今後の展望

©(一社)十日町市観光協会

©(一社)十日町市観光協会

今後の展望を教えてください。

先程も申し上げましたが、「日本⼀棚田を守っている企業」になりたいというのが私の野望です。今、直接的に守っているのはたった2.5haですが、星峠全体を考えれば30haを守っていることになります。
日本全体の棚田⾯積が15万haだとすると、1,500haになれば日本の棚田の1%を守っていることになります。直接的に1,500ha守ることは難しいかもしれないですが、関わりを増やしてゆくことができれば、日本で⼀番棚田を守っている会社になれると思っています。

現在当社では、棚田を活⽤したビジネスモデルの確⽴について検討を進めています。日本中で多様な絶景を生み出す棚田は大きなポテンシャルを持っていると考えており、私の頭の中には夢がどんどん広がっていますが(笑)、もちろん、ビジネスとして成⽴しなければいけないので、慎重に検討してゆきます。ビジネスモデルが確⽴できれば、新たな成長分野になりえます。「社会に貢献する⼒を⽣み出す」という当社グループのパーパス具現化に向け、棚田保全の取り組みにチャレンジしていきます!